預貯金債権の仮払い制度

      

札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。

前回の記事で「遺産分割前の遺産の処分」をしてしまった場合の規定(民法第906条の2)についてお話いたしましたが、私利私欲の為ではなく、遺産分割までの間の必要経費等の支弁の為、迅速な資金調達が必要な場合があります。

今回は、平成30年相続法改正により新設された、預貯金債権の仮払い制度についてご説明いたします。

 [目次]

 

◆預貯金債権の行使

◆払い戻し可能な一定金額とは

◆さいごに 

〇預貯金債権の行使

「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。(最大決平成28年12月19日)」とされ、遺産分割までの間、共同相続人がいる場合には預貯金債権は準共有(所有権以外の財産権が複数の者に帰属すること)とされ、単独で預貯金債権を行使(払い戻し)することができず、当時者全員の同意が必要とされていました。

しかし、被相続人の葬儀費用、遺産不動産の固定資産税等の納税、相続債務の弁済、更に被相続人に扶養されていた相続人(配偶者や子)の当面の生活費の用立てなど、すぐに資金が必要となる場合に不都合が生じる為、それに対応する為、相続法の改正により以下の規定が新設されました。

<第909条の2>

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

この新設規定により相続開始日を問わず、令和元年7月1日以降、一定の範囲で遺産である預貯金を払い戻すことができるようになりました。

 

〇払い戻し可能な一定金額とは

「遺産に属する預貯金債権」とは、各金融機関が相続開始時の払い戻し金額を明確に判断することができるように、各口座を基準とします。

また、第909条の2のかっこ書き“法務省令で定める額”とは、平成30年法務省令第29号により「150万円」と設定されており、以下の計算式で求められた額が遺産分割前における預貯金債権に対し、単独で権利の行使が可能な金額となります。

 相続開始時の各預貯金債権額×3分の1×払い戻しを求める相続人の法定相続分

 ※金融機関ごとに150万円を上限額とする。

 

これにより払い戻された預貯金債権は、遺産の一部分割によって取得したものとみなされますので、具体的相続分の算定の際はみなし相続財産として分割対象の遺産に加えられることになります。(具体的相続分から払い戻された預貯金額が控除される。)

尚、定期預貯金については、満期到来までは払い戻すことができないと考えられておりますので、ご注意ください。

 

〇さいごに

いかがでしたでしょうか。

もし、預貯金を払い戻した相続人に特別受益(被相続人から生前に贈与を受けたり、遺贈により受けた利益のこと)が認められ、預貯金の払い戻した金額がその相続人の具体的相続分を超えた場合には、遺産分割における相続人間の不公平を是正する為、遺産分割において超過部分を清算することになるでしょう。

また、この新設制度の利用には、通常の遺産分割協議の成立に必要となる書類と同様の書類(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員分の戸籍謄本および印鑑証明書等)が必要となります。

さらに、預貯金の仮払いを受けるには一定の時間と費用もかかってしまうことになり、金融機関側も所定の手続き・確認が必要となりますので、余裕がある場合は、遺産分割の完了後、一度に手続きを行う方が相続人と金融機関双方にとって望ましいといえるでしょう。

 

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