◆判例◆ 酒類製造の免許制

      

札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。

今回は、酒類製造の免許制と酒造の自由についての裁判例(最一小判平成元年12月14日)をご紹介いたします。

 

[目次]

 

◆事実の概要

◆判示事項

裁判要旨

◆さいごに

〇事実の概要

酒税法では、酒類製造者に納税の義務を課し、酒類を製造しようとする者は、税務署長の免許を受けなければならないとされており、違反者には刑罰も科せられると規定されています。

また、年間製造見込量が規定量に達しなければ、免許は付与されず、自己消費目的の酒類製造は事実上禁止されています。

本件被告人は、戦前からの社会運動家であり、戦後は福岡県内の村長を務め、いわゆる「成田闘争」に深く関与し、その間農業や文筆業にも従事していました。

その中で、「生活に必要なものは自分で生産する自由がなければならぬ」という思想を抱き、無免許のまま清酒および雑酒を公然と製造、利き酒会には国税庁長官に対して招待状を送るなどし、起訴されました。

第1審では、自家用の酒造は「経済的自由のひとつ」であるが、その規制は違憲ではないとして罰金30万円が言い渡されました。

第2審で被告人側は、自家用の酒造は私的事項であり、経済的自由ではなく人格的自律権として憲法13条によって保障されると主張したが、判決では「生活に必要なものを作る行為は…(略)経済的活動である」等の説示を行い、控訴は棄却されました。

これに対し被告人側は、自家用の酒造を放任しても酒税は減少せず、酒税法54条を適用するべきではなく、当該酒造は「私事に関する自己決定権」としての幸福追求権によって保障されており、原審は憲法13条、31条に反するとして上告しました。

<酒税法6条>

酒類の製造者は、その製造場から移出した酒類につき、酒税を納める義務がある。

2 酒類を保税地域から引き取る者(以下「酒類引取者」という。)は、その引き取る酒類につき、酒税を納める義務がある。

<酒税法7条1項2項>

酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目(第3条第7号から第23号までに掲げる酒類の区分をいう。以下同じ。)別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類の製造免許を受けた者(以下「酒類製造者」という。)が、その製造免許を受けた製造場において当該酒類の原料とするため製造する酒類については、この限りでない。

2 酒類の製造免許は、一の製造場において製造免許を受けた後1年間に製造しようとする酒類の見込数量が当該酒類につき次に定める数量に達しない場合には、受けることができない。

一 清酒 60キロリットル

二 合成清酒 60キロリットル

三 連続式蒸留焼酎 60キロリットル

四 単式蒸留焼酎 10キロリットル

五 みりん 10キロリットル

六 ビール 60キロリットル

七 果実酒 6キロリットル

八 甘味果実酒 6キロリットル

九 ウイスキー 6キロリットル

十 ブランデー 6キロリットル

十一 原料用アルコール 6キロリットル

十二 発泡酒 6キロリットル

十三 その他の醸造酒 6キロリットル

十四 スピリッツ 6キロリットル

十五 リキュール 6キロリットル

十六 粉末酒 6キロリットル

十七 雑酒 6キロリットル

<酒税法54条>

第7条第1項又は第8条の規定による製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

2 前項の犯罪に着手してこれを遂げない者についても、同項と同様とする。

3 前二項の犯罪に係る酒類、酒母又はもろみに対する酒税相当額(酒母又はもろみについては、その他の醸造酒とみなして計算した金額)の3倍が100万円を超えるときは、情状により、前二項の罰金は、100万円を超え当該相当額の3倍以下とすることができる。

4 第一項又は第二項の犯罪に係る酒類、酒母、もろみ、原料、副産物、機械、器具又は容器は、何人の所有であるかを問わず没収する。

5 第一項又は第二項の行為に係る酒類については、当該酒類を製造した、又は製造に着手してこれを遂げない者から、直ちにその酒税を徴収する。ただし、前項の規定により没収された酒類には、酒税を課さない。

6 第一項又は第二項の行為に係る酒母又はもろみはその他の醸造酒とみなし、当該酒母又はもろみを製造した者から、直ちにその酒税を徴収する。ただし、第四項の規定により没収された酒母又はもろみには、酒税を課さない。

<憲法13条>

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

<憲法31条>

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

〇判示事項

酒税法7条1項、54条1項の規定と憲法13条、31条

 

〇裁判要旨

酒税法7条1項、54条1項の規定は、自己消費目的の酒類製造を処罰する場合においても、憲法13条、31条に違反しない。

 

〇さいごに

いかがでしたでしょうか。

酒類製造免許は酒税法7条2項各号に掲げられた通り、17種類に分かれています。

酒類製造免許の取得については、税務署の手引き等にも記載が少ないこと、また、必要書類の作成や手配に時間を要するものも多く、手続きが複雑であるといえます。

更に、自治体により異なりますが、免許の申請から許可証の交付までは数か月かかる場合が多く、最短でも4か月程度は要すると言われていることから、余裕を持ったスケジュールを組むことが必要です。

尚、お酒は製造のみならず、販売する場合にも免許の取得が必要となりますので、無免許で営業を行うことのないようご注意ください。

 

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