募集株式の発行等について②

      

札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。

今回は、募集株式の発行等に関する瑕疵について、ご説明をいたします。

 

[目次]

 

◆募集株式の発行等に関する瑕疵

①募集株式の発行等の差止め

②新株発行・自己株式処分の無効の訴え、不存在確認の訴え

◆さいごに

〇募集株式の発行等に関する瑕疵

募集株式の発行等の手続き等において、法令又は定款違反となるようなことがあった場合には、取締役等の責任問題となる他、その発行等の効力自体も問題となります。

募集株式の発行等に関する瑕疵を争う為の手段としては、募集株式の発行等の効力が発生する“前後”にそれぞれ、募集株式等の発行等の差止め、無効の訴え・不存在確認の訴えという制度が設けられています。

①募集株式の発行等の差止め

会社が法令・定款違反又は著しく不公正な方法で募集株式を発行又は自己株式を処分したことにより、株主が不利益を受ける恐れがある場合には、株主は会社に対して発行等の差止めを請求することができます。

差止めは、違法又は不公正な募集株式の発行等を事前に阻止する制度です。

その為、募集株式の発行等の効力発生前までに差止め請求を行わなければならない為、株主が差止め請求を本案とする募集株式の発行等の差止め仮処分の申立て(民事保全法23条2項)をする例がしばしばみられます。

<民事保全法23条>

係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。

4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

 

また、「著しく不公正な方法」とは、不当な目的(会社支配権の獲得・維持目的等)を達成するために募集株式の発行等が利用される場合を指すと解されています。

ただし、正当な目的である資金調達目的をも有している場合、いずれが主要な目的であるかにより、不公正発行に当たるかどうかを判断するのが下級審裁判例の主流となっています。

②新株発行・自己株式処分の無効の訴え、不存在確認の訴え

募集株式の発行等の効力が生じた、その効力を否定しようとする場合には、無効の訴え・不存在確認の訴えという制度が設けられています。

「無効」は、いつでも、だれでも、どのような手段によっても主張できるのが民法の原則です。

しかし、株式発行のような不特定多数の引受人・転得者等を巻き込む行為について、無制限に無効主張を認めてしまうと、法律関係が不安定となり混乱を招きかねません。

その為、募集株式の発行等については「無効の訴え」を裁判所に提起するという形でしか無効を主張できないこととされています。

ただし、株式発行としての実体がない場合(発行登記のみ、募集事項の決定・申込み・割当てなどがされていないような場合など)については、その効力を否定しても法的安定性については害されないことから、これを「不存在」と呼び、いつでも・誰でも・どのような手段によっても主張できるとされており、また、不存在確認の訴えによらなくても、その不存在の主張が可能とされています。

⑴新株発行・自己株式処分の無効の訴え

<出訴期間>

公開会社:効力が生じた日から6か月以内 非公開会社:効力が生じた日から1年以内

<出訴権者>

株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)

<被告>

会社

<無効事由>

・明文はなく、重大な法令・定款違反の場合に限られると解されています。

・新株発行無効の訴えにおいて、出訴期間経過後に新たな無効事由を追加して主張することは許されていません。

<無効判決の効力>

・当該株式会社は、当該判決の確定時における当該株式(自己株式)に係る株主に対し、原則として、払込みを受けた金額又は給付を受けた財産の給付の時における価額に相当する金銭を支払わなければなりません。

・判決の効力は、多数の法律関係を画一的に処理する観点から、第三者にも及びます。

・判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失い、発行・処分の対象株式も、将来に向かって無効となります。

⑵新株発行・自己株式処分の不存在確認の訴え

新株発行・自己株式処分の不存在確認の訴えは、新株の発行等の実体が存在しないにもかかわらず、これが実在するかのような外観がある場合、その不存在を訴訟により確認するために提起されます。

<出訴期間>

制限なし

<出訴権者>

制限なし ※不存在確認の利益は必要

<被告>

会社

<不存在事由>

新株発行・自己株式処分の実体がないと言える程、瑕疵が重大である場合に認められます。

<判決>

不存在確認判決には対世効(第三者に及ぶ)・遡及効が認められます。

 

〇さいごに

いかがでしたでしょうか。

無効の訴えと不存在確認の訴えは、出訴期間や出訴権者等、その規定は大きく異なります。

また、無効事由に関する判例として、取締役会の決議を経ないで新株発行がされた場合や、株主総会の特別決議を経ないでなされた第三者に対する新株の有利発行がされた場合など、内部要件にすぎないような場合は無効事由にあたらないとされていますので、ご注意ください。

 

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