◆判例◆ 外国人の政治活動の自由

      

札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。

今回は、在留期間更新不許可処分取り消し請求についての裁判例(最大判昭和53年10月4日)をご紹介いたします。

 

[目次]

 

◆事実の概要

◆判示事項

◆法定要旨

◆さいごに

〇事実の概要

アメリカ国籍を持つXは出入国管理令(現・出入国管理及び難民認定法)に基づき、語学学校の英語教師として在留期間を1年とする上陸許可を得て日本へ入国しました。

Xは英語教師として生計をたてる傍ら、琴と琵琶の修練を専門家に師事して、日本古来の音楽文化の研究も続けていました。

日本での英語教育と琴・琵琶等の研究を継続したいと考えたXは、法務大臣に対して1年間の在留期間の更新を申請しましたが、法務大臣は出国準備期間として同年9月7日までの120日間の在留期間更新を行いました。

そこでXが再度1年間の在留期間の更新申請をしたところ、法務大臣は同年9月5日付で更新を許可しないとの処分を行った為、Xは本件処分の取り消しを求めて出訴しました。

法務大臣が本件処分を行ったのは、Xが在留期間中に行った①無届転職②政治活動が理由です。

②についてXは、「ベトナムに平和を!市民連合」に所属しており、⑴米国のベトナム戦争介入反対⑵日米安保条約反対⑶出入国管理法案反対等を訴えるデモや集会に参加していました。

第1審判決では、在留更新の拒否について法務大臣が「相当広汎な裁量権を有する」ことを認めつつ「この裁量権も憲法その他の法令上、一定の制限に服するのは当然である」としたうえで、①のXの転職については、一応の理由があり、転職者についても更新を許可する例もあることから「社会観念上著しく公平さ、妥当さを欠く」としました。

②については、⑴は米国人として米国の政策に反対していた、⑵は参加態様は指導的・積極的なものではなかった、⑶は在留外国人にとって直接の利害関係を持つ問題であるから「社会通念上著しく妥当性を欠く」として本件処分を取り消しました。

これに対し第2審判決は、外国人の受け入れは基本的には受入国の自由であり、外国人は在留期間内に在留目的を達成して国外に退去するのが建前であるから、法務大臣は更新を適当と認めるに足りる相当の理由がある場合のみ許可をするのであって、その判断は法務大臣の自由な裁量に任されており、高度の政治的配慮から在留期間中に行った適法な政治活動を消極の自由として判断したとしても違法ではないとして、第1審判決を取り消した為、Xはこれを不服とし上告しました。

 

〇判示事項

①外国人のわが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利と憲法の保障の有無
②出入国管理令21条3項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断と法務大臣の裁量権
③出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無についての判断と裁判所の審査の限界
④わが国に在留する外国人と政治活動の自由に関する憲法の保障
⑤外国人に対する憲法の基本的人権の保障と在留の許否を決する国の裁量に対する拘束の有無
⑥外国人の在留期間中の憲法の保障が及ばないとはいえない政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとした法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできないとされた事例

 

〇法定要旨

➀外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない
②出入国管理令21条3項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は「法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすることが許されないものではない
③裁判所は、出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するにあたっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であるとすることができる。
④政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。
⑤外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない
⑥上告人の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということはできない

 

〇さいごに

いかがでしたでしょうか。

本判決基準は、日本に生活拠点を有する外国人の再入国の権利を否定した判決(最判平成4年11月16日)や、指紋捺印拒否を理由とする協定永住資格者に対する再入国不許可処分を適法とした判決(最判平成10年4月10日)でも援用されており、現在も国際人権法の観点から見て問題のある退去強制を正当化する役割を果たしています。

しかしながら、いくつかの問題点も指摘されており、本判決が現在でも有効なのか、抜本的な見直しも行われています

 

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