限定承認・相続放棄の注意点
札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。
今回は、相続における限定承認・相続放棄の際の注意点についてご説明いたします。
[目次]
◆限定承認の注意点
◆相続放棄の注意点
◆さいごに
〇限定承認の注意点
相続方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があります。
プラスもマイナスも含めた全ての財産を相続する単純承認と、一切の権利を放棄する相続放棄については皆さんもイメージがしやすいかと思いますが、限定承認についてはあまり詳しくないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実務上、限定承認が利用されるのは以下のようなケースです。
・被相続人の相続財産について、プラスの財産とマイナスの財産が混在している為、すぐにプラスマイナスの判断がつかない場合。
・被相続人の相続財産が全体的にマイナスであるが、自宅や事業用財産等、どうしても手放せない財産がある場合。
限定承認をする際、相続財産がマイナスとなる場合には通常、金銭以外の相続財産は、競売にかけられることになりますが、相続人には先買権というものが認められています。
例えば、被相続人が自宅不動産2,000万円、現金1,000万円、借金1億円を遺したとします。
マイナスの財産の方が多い為、相続人が限定承認の手続きを取ることに決めた場合、自宅不動産を競売にかけて現金に換える必要があります。
しかし、自宅不動産だけは手元に残したいと考える場合、相続人は自宅不動産の鑑定評価額2,000万円を支払うことにより、競売の差し止めをすることが可能となります。
相続人が鑑定評価額を支払うことで、相続財産は現金3,000万円となり、債権者には、この3,000万円を弁済すれば足り、これが限定承認における先買権と呼ばれています。
限定承認をする際の注意点として、相続財産中に含み益が存在する財産がある場合には、被相続人から相続人に対しての譲渡があったものとみなされ、譲渡所得税が課税されてしまうことが挙げられます。
例えば、被相続人が保有していた不動産が当時3,000万円で購入されたものであったが、現在の価値に直すと4,000万円に値上がりしているような場合です。
この場合、相続人が限定承認をすると、値上がりした1,000万円分については譲渡所得税が課税されることになりますので、ご注意ください。
〇相続放棄の注意点
相続放棄をする際の注意点としては、「相続放棄」という言葉は非常に誤用が多い法律用語であるということが挙げられます。
相続人が複数いる場合、被相続人の財産について一部の相続人が全てを相続し、自分は一切の財産も受け取らないという旨の合意をし、遺産分割協議書を作成した場合などにこの「相続放棄」の誤用がされているケースが散見されます。
相続放棄は、自己の為に相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し出て、手続きすることが必要です。
前述のようなケースでは、法律的には「単純承認」をしたに過ぎません。
単純承認をしたうえで、その後、遺産分割協議を行い、財産を全く受け取らない合意をしたという扱いとなります。
その為、前述のケースで被相続人に1,000万円の借金があった場合、全財産を相続したAと、財産を全く受け取っておらず相続放棄したものと考えていたB、2人の相続人がいた場合、Bは法的には相続放棄は行っておらず、単純承認したものとなる為、債権者に対しては借金500万円についての責任を負う義務が生じることとなりますので、ご注意ください。
また、相続放棄をした場合には、相続権は法定相続順位が次順位の相続人に移ることになります。
例えば、以下のように、被相続人(本人)の死亡の前に、既に両親(父母)は死亡していたとします。
この場合、法定相続順位1位となるのは配偶者(相続分2分の1)と子(それぞれ4分の1ずつ)です。
しかし、被相続人に多額の借金があることを理由に、配偶者及び子が相続放棄をした場合、法定相続順位2位の両親に相続権が移りますが、その両親も死亡している為、法定相続順位3位の兄弟姉妹へ相続権が移ることになります。
被相続人の兄弟姉妹は、前順位の相続人が相続放棄をし、自分が相続人になったと知った時から3か月以内に限定承認もしくは相続放棄の手続きをしない場合、単純承認をしたものとみなされることになりますので、ご注意ください。
〇さいごに
いかがでしたでしょうか。
上記の他、相続放棄をすることで、相続税の基礎控除額が変わるのではないか、と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
相続税の基礎控除は、「3,000万円+(相続人の数×600万円)」で計算されますが、相続放棄をすることで相続人の人数が減り、それにより控除額も減ってしまい、相続放棄がなされていない場合と比べて不利益を被ることになります。
その為、相続税の基礎控除の計算上においては、相続放棄がされていても、相続放棄がなされていないものとして相続人の数をカウントし計算することとされていますので、ご安心ください。
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