寄与分の類型③

      

 札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。

今回は、寄与分の類型のうち、「療養看護型」についてご説明いたします。

 

[目次]

 

◆寄与分の類型

【療養看護型】

◆さいごに

〇寄与分の類型

寄与分が考慮される内容は、民法で「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法(第904条の2)」と定められています。

<寄与分の一般要件>

・特別の寄与があること(特別性)

・対価を受けていないこと(無償性)

・特別の寄与によって、被相続人の財産が維持または増加したこと(因果関係)

 

寄与分の類型のうち、今回ご説明する「療養看護型」は上記の通常必要となる一般要件の他、「療養看護の必要性」や「継続性」、「専従性」という要件を満たすことが必要となります。

【療養看護型】

被相続人の療養看護”に従事した場合に該当します。

具体例としては、被相続人の身体状況により看護人を雇用しなければならない状態の場合、病院や施設への入所が必要な状態の場合に、被相続人が自ら費用を支出すべきところ、当事者である相続人が療養看護をしたことによりそれらの支出を免れていたような場合です。

支出を免れたことにより、“被相続人の財産の維持または増加”に貢献したと認められることになります。

尚、療養看護にあたる行為には介護行為が含まれており、寄与分が主張される場合の多くは被相続人の介護にあたっていた場合であると言えます。

相続人が複数いる場合には、特定の当事者のみが被相続人に対して療養看護行為を行っていると、仕事や娯楽など生活の様々なことが制限され体への負担も少なくないことから、どうしても不平不満が生まれやすく、これまでの苦労・貢献が考慮されないのはおかしいと感じる場合も多いことでしょう。

「療養看護型」の寄与分が認められる為には、まず一般要件の「特別性」の部分で、被相続人と相続人の身分関係や親族関係に基づいて、「通常期待される程度を超える貢献」をしている必要があり、ただ被相続人と同居して一生懸命世話をした、というだけでは認められることはありません。

更に、被相続人所有の不動産で同居していた場合には「無償性」の部分でも、生活費等の負担の有無などが裁量割合で考慮されることになり、要件を満たしていないと評価される可能性もあります。

また、同居・別居を問わず、被相続人の通院や入院、入所施設へのお見舞いや付き添いをしていたことによる寄与分が主張されることもありますが、入院・入所の期間には後述する「療養看護の必要性」の要件を満たさず、お見舞いや付き添いについても通常期待される程度の貢献であると考えられている為「特別性」の要件を満たすことにはなりません。

尚、別居の場合で、被相続人の自宅に通って療養看護を行っていた場合の交通費についても寄与分として認められることはありませんのでご注意ください。

次に「療養看護の必要性」についてですが、療養看護の必要性が認められる為の目安として、被相続人が介護保険制度(厚生労働省HP)における身体状態が要介護度2以上であることが求められています。

要介護認定は、高齢者の介護の必要性の程度に応じて要介護度1~5に区分されます。

介護の必要性の程度が比較的軽い場合には要介護度1、程度が重い場合には要介護度5に認定され、目安となる要介護度2とは、家事や歩行、起き上がりなどの日常動作が一人では行えず、食事や排せつ等においても見守りや手助けが必要であるような身体状態である場合に認定されます。

寄与分の要件を満たす為には、被相続人がそのような「療養看護の必要性」が認められる身体状態であり、近親者による療養看護を必要としていた場合に限られます。

その為、前述したように、病院への入院や施設への入所期間は例え被相続人の身体状態が療養看護を必要としていても、病院や施設で療養看護がなされている為、近親者による療養看護の必要性はなかったということになる為、要件を満たすことにはなりません。

また、「継続性」の要件については、相当期間に及んでいる必要があり1年未満など比較的短期間である場合などは、通常行うと期待される程度の貢献であると評価をされることになります。

被相続人が自宅での介護と病院への入院や施設への入所などを繰り返している場合、自宅での療養看護期間が連続して相当期間に及んでいなくても、合計すると相当期間に及んでいる場合には継続性の要件を満たすことになると考えられています。

この相当期間の目安は、おおむね1年以上は必要であると言われています。

そして、「専従性」の要件についてですが、専業や専念までは要求されていないものの、本来の仕事の合間で行うようなものでは足りず、かなりの負担を要するものであることが必要であると考えられています。

例えば、相続人が平日の日中は仕事をしており、その間、被相続人は介護サービスを受け、帰宅後に療養看護を行っているような場合は「専従性」の要件を満たしません。

そもそも被相続人が日中、介護サービスを受けている場合には、寄与自体が認められることにはなりませんのでご注意ください。

~寄与分の算定方法~

療養看護型の場合、寄与分の算定には以下の方式で算定することが考えられます。

寄与分=報酬相当額×介護日数×裁量割合

報酬相当額は、介護報酬基準(厚生労働省HP)を参考にし、要介護度などにより異なります。

また、裁量割合では、身分関係の他、介護の程度や法定相続分の割合、被相続人から受けていた利益等(被相続人所有の不動産への同居、生活費の負担など)の一切の事情を考慮して定められることになります。

 

〇さいごに

いかがでしたでしょうか。

「療養看護型」の場合は、被相続人の療養看護の為に仕事を辞めたり転職を余儀なくされた場合に、仕事を辞めたり変えていなければ得られたであろうと考えられる収入についても寄与分が主張されることがあります。

しかし、当事者である相続人の収入の減少が寄与分と認められることはなく、退職・転職後の療養看護行為が寄与分に該当するかを検討・判断されていくことになりますので、ご注意ください。

 

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