宅地建物取引業~自ら売主となる場合の8つの制限①~

      

札幌の行政書士法人Aimパートナーズです。

 

今回は、宅地建物取引業において、宅建業者が自ら売主となる場合の制限に関するお話しをいたします。

 

[目次]

 

◆「自ら売主」となる場合の制限について

制限①:クーリング・オフ

◆さいごに

〇「自ら売主」となる場合の制限について

報酬額の制限①および報酬額の制限②にてご説明したように、宅建業者が代理・媒介を行った場合に受け取ることのできる報酬額には限度があります。

しかし、同じ金額の売買契約を成立させた場合において、宅建業者が「自ら売主」となった場合には、代理・媒介によって売買契約を成立させた場合に比べ、受け取ることのできる報酬額が高額となり、宅建業者はこの態様での取引が一番利益が出ることになります。

例えば、1億円の宅地の売買契約を成立させた場合、報酬額は以下のような差が生まれます。

【代理・媒介】

1億円×3%+6万円=306万円

・媒介 ⇒ 依頼者の一方から最高306万円双方から依頼を受けた場合は最高612万円

・代理 ⇒ 依頼者の一方から最高612万円

【自ら売主】

(宅地の仕入額を4千万円とした場合)1億円-4千万円=6千万円

いかがでしょうか、自ら売主となる場合には売値を上げれば上げる程、より高額な利益を上げることが可能です。

その為、宅建業者が自ら売主となる場合には、買主である顧客の保護をより手厚くする必要性が生じ、宅建業者には「8つの制限」が設けられています。

宅地建物取引業法は、一般消費者保護の為に存在しています。

よって、この8つの制限は宅建業者同士の取引には適用されません。

適用となる取引は、「宅建業者が自ら売主」となり、「一般消費者が買主」である場合に限られます。

 

〇制限①:クーリング・オフ

クーリング・オフとは、一定の契約を一定期間に限り、手数料や違約金がかからず無条件で撤回・解除することができる制度です。

実際に皆さんも、普段の生活で耳にする機会のある言葉かと思います。

民法では契約の成立と方式について、以下のように定められています。

<第522条>

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

 

買主側の申込みの意思表示および売主側の承諾によって契約は成立しますが、申込みと承諾は同時に行わなければならないという決まりはありません。

クーリング・オフは、買主が「冷静に判断ができないような場所」で「申込み」の意思表示した場合に適用されます。

その為、例えば、喫茶店で申込みが行われた場合には適用となりますが、宅建業者の事務所で申込みが行われた場合には適用となりません。

また、「契約(承諾)」の場所ではクーリング・オフの可否は決まらない点にご注意ください。

クーリング・オフが適用されない申込み場所は以下の通りです。

1⃣買主が“自ら申し出た”場合の自宅勤務先

2⃣事務所

3⃣事務所以外の場所で、継続的に業務を行うことができる施設があり、専任の宅建士の設置義務がある場所

4⃣一団の(10以上)宅地建物の分譲を行う“土地に定着する案内所で、専任の宅建士の設置義務がある場所

5⃣宅建業者が自ら売主となり、他の宅建業者に売買の代理・仲介を依頼した場合における他の宅建業者の2⃣~4⃣の場所

 

宅建業法では、事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等として定められています。

<第37条の2>

宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。

一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。

二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。

2 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。

3 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。

4 前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

 

上記の通り、クーリング・オフができることを宅建業者から「書面」で告げられた日から「8日間」経過した場合買主が「宅地建物の引渡しを受け」かつ「代金全額を支払った」場合には、クーリング・オフはできなくなります。

もし、不動産の移転登記が完了していたり、クーリング・オフについて口頭でしか告げられていなかったり、代金はまだ一部しか支払っていない、という場合であれば、その他の条件を満たしていればクーリング・オフはいまだ可能ということになります。

尚、買主においても、クーリング・オフをする際は「書面」で行う必要があり、その効力は買主が書面を“発した時”に生じるとされており、8日以内に書面をポストへ投函すれば問題ないことになります。

 

〇さいごに

いかがでしたでしょうか。

クーリング・オフが適用されない4⃣の具体例としてはモデルルームなどが該当しますが、土地に定着していないテント張りの案内所は該当とはならず、クーリング・オフが可能です。

また、買主の自宅や勤務先で申込みがされたとしても、買主が“自ら申し出た”場合でなければ、この場合もクーリング・オフが適用となります。

買主がクーリング・オフする為には、申込みの場所および日数に注意することが必要であり、売主である宅建業者はクーリング・オフができることを書面で告げることが義務ではないからといって、そのままにしておくと、いつまでもクーリング・オフができることになってしまうことに注意が必要です。

 

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